因幡堂とは、京都市下京区因幡堂町(松原通烏丸東入)にある平等寺のことである。(【図1】参照)。

【図1】江戸中期の因幡堂境内
(安永9年刊『都名所図会』、名古屋女子大学図書館蔵)
本尊は重要文化財の薬師如来で、信濃善光寺の阿弥陀如来、嵯峨清涼寺の釈迦如来とともに日本三如来に数えられている。この薬師如来は、因幡の国司であった橘行平が同国の海中から引き上げて祀ったものであることから、俗に因幡堂または因幡薬師と称されてきた。
その因幡堂が狂言にしばしば登場する。曲名そのものが「因幡堂」と名付けられた狂言をはじめとして、「鬼瓦」「仏師」「六地蔵」「金津(金津地蔵)」などの諸曲がこの寺を舞台に用いている。実在する固有の寺院がこれほど狂言に用いられている例はほかにない。その理由は何なのか。狂言との関係はどうなのか。そのような疑問を明らかにすべく、因幡堂の位相を多角的に探ってみたい。

